Open Sink, Closed Sink

鰤カマと鮭カマが好きです

暗闇に親しむ ~ ダイアログ・イン・ザ・ダークに行ってきました

※⚠️ご注意⚠️:この記事は竹芝のダイアログ・イン・ザ・ダークの体験談です。ある程度気をつけたつもりですが、2024年9月10日~11月24日開催の 身体感覚を磨こう!秋のまっくら大運動会 に参加予定のかたは、ネタバレになる可能性がありますのでくれぐれもご注意ください🙇

先日、竹芝に行ってダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)というアクティビティに参加してきました。日本語に訳すと「暗闇での対話」になるでしょうか。

公式HP*1では次のように説明されています。

この場は完全に光を閉ざした“純度100%の暗闇”。

普段から目を使わない視覚障害者が特別なトレーニングを積み重ね、ダイアログのアテンドとなりご参加者を漆黒の暗闇の中にご案内します。

視覚以外の感覚を広げ、新しい感性を使いチームとなった方々と様々なシーンを訪れ対話をお楽しみください。

参加者はチームとなって、何も見えない真っ暗闇のなかで、視覚障害者であるアテンド(案内人)の先導のもと様々な体験や活動をする、というものです。

しばらく前に本でDIDを知って興味をもち、今回参加してきた、といういきさつでした。

闇に呑まれての運動会、果たして…?

暗闇での活動にはテーマがあって、私が参加したときは暗闇の運動会というテーマでした。実際に何も見えないなかで身体を動かしましたが、知らぬ間に抱いてしまっている先入観や自分のなかのステレオタイプを打ち破るような経験ができ、とてもおもしろかったです(ちなみに、私もそうなのですが、運動が苦手なかたでも大丈夫でした!)。

体験の前に「ご希望でしたらメガネはお預かりできます」と案内があって実際に預けたのですが(預けなくても大丈夫です)、普段の生活でメガネなしで過ごすなんてとんでもないことです(水泳や剣道など、スポーツなんかではもちろんはずす機会はあるのですが)。しかしすぐに「何も見えないんだから、どうせメガネがあったところで何も変らないのか」ということに気づきます。実際、1時間半くらいの体験の間真っ暗闇に身を置いた訳ですが、メガネなしでも何も困りませんでした。

そして暗闇のなかで移動したり競技に参加したりするのですが、いかんせん何も見えないため、背中をまるめて常にビビりながら、文字通り手探りしながら身体を動かすことになります。「もし、今の自分の姿を明るいところで見たらものすごく滑稽だろうな~」と思いながらも、でも自分の一歩前にすら何があるかわからない闇のなかでは、やはり猫背になり、常に及び腰でのそのそ動いてしまいます。普段当たり前に得られる情報にアクセスできないことは、不安であり恐怖でもあります。

どんな体験をしたのか、あんまりいろいろ書くのはネタバレになってしまうので控えたいと思いますが、実施した種目のひとつに、先に掲載したイベントページでも紹介されている玉入れがありました。

想像がつくと思いますが、玉を投げても、玉が果たしてカゴに入ったかどうかがわからない(笑) アテンドのかたが都度、「入ったよ!」「また入った!」と教えてくれるのですが、「どうしてわかるんだろう??」と頭のなかはハテナになりながらも、一生懸命にカゴ(があるはずの方向)めがけて玉を放りました。

恐る恐る身体を動かす参加者たちと対照的なのがアテンドのかたで、普段の生活でも明るさなんて関係ないものだから、普段どおりなんでしょう、テキパキ行動するんですよね。それがまた痛快というか、いかに自分が普段、視覚をあてにして生活を送っているのかという事実を突き付けられます。

一方で、視覚に頼らなくても声をあげることで、お互いの位置や、人がしゃがんでいるのか立っているのか姿勢を認識したり、思いのほか靴越しに足から得られる情報が多いことを知ったり、暗闇に長時間身を置くことで気づかされることも多かったです。なので、他の人が立てた物音や声が遠くなると「置いてかれたのではないか」と急に不安になり、めちゃめちゃ焦ります(笑)*2

参加者どうしで協力しての取組みもありましたが、声かけしながらやることで、思いのほか息をあわせることができるのも発見でした(とはいえ、実際には「勢いにまかせて」という側面も大きかっと思いますが…笑)。

また、アクティビティのなかで、ものを区別するときの手段が視覚を前提としているものが世の中には多いのだ、ということにも気づかされました。自販機の商品、パッケージが統一されているシリーズものの食品(例えばふりかけやパスタソース)、あるいはいろんな味が個包装で入っているファミリー袋のお菓子なんかも、暗いなかでは開封するまでわからない。

思えばこれは視覚障害者の日常、いわゆる「あるある」なんだろうと思います。見える人は味や内容物を目で認識したうえで好きなものを選べますが、見えない人にとってはこれが当てずっぽう、運試しみたいになるんですね。(実際にはSeeing AIとかBe My Eyesのようなアプリを使って判別しているケースが多いようです。スマホやAIで視覚障害者の生活も大きく変化してきているようです)

もっと知ってみたい

やはりこういう体験をすると、視覚障害者のかたと実際にお話をしてみたり、とりまいている世界を知りたくなるものです。示唆に富むというんでしょうか、いろいろ考えさせられたり、興味をかき立てられる、とても素敵な体験ができた一日でした。

聞いた話では、社員研修として採用している企業もあるようで、「研修でこういう体験ができるのはうらやましいな~」と思いました。企業の研修というと大人向けですが、小中学生の体験学習にもとてもいいんじゃないかと思いましたし(実際に取り入れられているのかもしれないですね)、ぜひ多くの人に体験してほしいと感じました。

ちなみに、当初は「視覚から解き放たれる」という意味合いで「光からの『解放』」のようなカッコいい雰囲気のタイトルにしようと思っていたのですが、今の時点の自分にとって暗闇はやはり「視覚を制限されること、失うこと」に感じてしまい、この表現のように前向きにとらえるのはまだまだ難しかったので、「親しむ」程度にしておこうと書き換えました(笑)。

繰り返し体験することで気づく面もたくさんあるだろうと思うので、今後も折を見てDIDに行こうと思っています。(次は神宮外苑*3に…)

*1:https://did.dialogue.or.jp/about/

*2:随時点呼をとって人数確認をしてくれます。

*3:都内でDIDの体験ができるところは、私が行った竹芝と神宮外苑があります。 https://did.dialogue.or.jp/totonou/